補助金ニュース / 最低賃金 引き上げ 補助金
最低賃金引き上げに 使える 補助金。 業務改善助成金は 9月1日から
公開: 2026年8月22日 ・ 更新: 2026年9月8日

10月に入ると最低賃金がまた上がります。今年の引き上げ幅は54円から65円で、全国加重平均は時給1,177円になります。9月3日に47都道府県すべての答申が出そろい、東京は10月1日から1,280円です。人を雇っている小さな会社やお店には重い数字ですが、この賃上げには国の助成金がセットで用意されています。業務改善助成金といって、時給を上げて設備投資をすると、かかった費用の最大8割が戻ります。その申請受付が9月1日に始まりました。
私は補助金検索サービス「デルカモ」を運営していて、国の電子申請システムjGrantsに載る公募300件前後を毎日同期しています。業務改善助成金は労働局が審査する制度で、9月1日の受付開始に合わせてjGrantsにも都道府県ごとの申請フォームが並びました。それでも検索すると情報が散らかっていて、今年の締切がいつなのかすら分かりにくい。厚生労働省の今年度版リーフレットを通して読んだので、金額と要件、そして今年特有の「締切の短さ」を整理します。
今年の 最低賃金は いくら 上がるのか
国の中央最低賃金審議会が7月28日に出した目安は、埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪の6都府県が54円、それ以外の41道府県が56円の引き上げでした。この目安をもとに各県の審議会が審議し、9月3日に47都道府県すべての答申が出そろいました。引き上げ幅は54円から65円で、33県が目安を上回っています。全国の加重平均は1,121円から1,177円に上がります。上げ幅は56円で、昨年度の66円よりは小さいものの、2年連続で50円を超える大幅な引き上げです。
東京は現在の1,226円から54円上がって1,280円、10月1日発効の予定です。ただし発効日は県ごとに違い、10月1日に上がるのは15都道府県だけで、京都は11月16日、岩手・熊本は12月1日、沖縄は12月2日と、遅い県は12月に入ってからです。自分の県の新しい金額と発効日は、県労働局の発表か厚生労働省が公表した答申状況の一覧で確認できます。47都道府県の改定額と発効日、助成金の締切は別の記事に一覧にしました。
時給1,200円のスタッフを3人雇っていれば、56円の引き上げで年間の人件費はざっくり30万円以上増えます。この負担にそのまま耐えるか、国の支援を使って設備投資ごと片付けるか。ここで選択肢になるのが業務改善助成金です。
業務改善助成金は 9月1日受付開始。 締切は 最低賃金の 発効日前日
業務改善助成金は、事業場内で最も低い時給(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上につながる設備投資などをした場合に、その費用の一部を助成する制度です。POSレジの導入、配達用のリフト付き特殊車両、国家資格者による経営コンサルティング、顧客管理のシステム化などが対象経費の例として挙がっています。
今年の申請受付は9月1日に始まりました。厚生労働省のページにも「令和8年度業務改善助成金の受付が開始しました」と告知が出ています。問題は締切です。リーフレットには、申請期間は9月1日から「申請事業所の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日又は同年11月30日のいずれか早い日」までと書かれています。
つまり東京のように10月1日発効なら、申請できるのは9月30日まで。実質1か月しかありません。発効が遅い県でも11月30日で打ち切りです。10月に入ってから「何か使える補助金はないか」と調べ始めた時点で、もう締め切られている県が多いはずです。この記事を受付開始前の8月に出したのはそのためです。
賃金の引き上げ自体も9月1日から発効日の前日までの間に行う必要があります。どうせ10月には最低賃金に合わせて上げざるを得ない時給を、ひと月ほど前倒しして計画的に上げる。それだけで設備投資の費用に助成が付く構造です。
いくら戻るのか。 コースと 上限額
助成額は、引き上げ幅と人数で決まる上限額の範囲で、設備投資などにかかった費用に助成率を掛けた金額です。コースは引き上げ幅ごとに50円・70円・90円の3つあります。
従業員30人未満の事業場を例にすると、1人の時給を50円上げるなら上限40万円、2〜3人なら70万円です。90円コースだと1人で100万円、2〜3人で240万円まで上がります。最大の600万円は、90円コースで10人以上を引き上げる場合の数字で、これは後述の特例事業者だけが使える区分です。
助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら5分の4、1,050円以上なら4分の3です。リーフレットに載っている計算例をそのまま借りると、事業場内最低賃金1,040円の会社が8人の時給を1,130円まで上げ(90円コース・上限450万円)、600万円の設備投資をした場合、600万円×5分の4=480万円と上限450万円を比べて安いほう、つまり450万円が支給されます。
特例事業者という区分もあります。事業場内最低賃金が1,050円未満の場合と、原材料費の高騰などで申請前6か月間の平均利益率が前年度より3%ポイント以上下がっている場合です。後者に当てはまると、通常は対象外のパソコン・スマホ・タブレットの新規導入まで助成対象に入ります。物価高で利益が薄くなっている店ほど使い道が広がる設計です。
対象に なる事業場の 条件
対象は中小企業・小規模事業者で、大企業の子会社など「みなし大企業」は除かれます。その上で、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金より低いことが条件です。すでに全員の時給が新しい最低賃金以上なら、この助成金の出番はありません。逆に言えば、10月の改定で時給を上げなければならない事業場は、だいたいこの条件に当てはまります。
引き上げる対象としてカウントされるのは、雇入れから6か月を過ぎた、週の所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者です。今年度から雇用保険の被保険者であることが明確に要件になりました。入ったばかりの人や週数時間のアルバイトだけを上げても対象にならない点は先に押さえておいてください。
申請の単位は会社ではなく事業場ごとです。工場と事務所が別なら別々に申請します。解雇や賃金引き下げなどの不交付事由があると出せません。
先に 知らないと 落ちる 3つの 罠
この制度、要件そのものより段取りでつまずきます。リーフレットから注意点を3つだけ拾います。
1つ目は賃上げのタイミングです。時給の引き上げは最低賃金の発効日の前日までに完了させる必要があります。リーフレットには、10月1日発効の県で9月30日に引き上げれば対象、10月1日当日だと対象外、という例がわざわざ載っています。「発効日に合わせて上げる」という一番自然な動きをすると1日違いで全額もらい損ねる、ここが最大の罠です。引き上げ後の時給は就業規則などに明記する必要もあります。
2つ目は発注のタイミングです。助成対象になるのは交付決定の後に導入した設備だけで、決定前に買ったものは対象になりません。申請してから審査を経て交付決定が出るまでは待ちの期間になるので、レジや車両の見積もりだけ先に取っておいて、発注は決定通知を待つ。この順番を崩すと戻るはずのお金が消えます。事業自体の完了期限は交付決定年度の1月31日です。
3つ目は予算切れです。この助成金は予算の範囲内で交付されるため、申請期間の途中でも募集が終わることがあると明記されています。同じ事業所が使えるのは年度内1回、時給の引き上げを複数回に分けることも認められません。締切を待たず、受付開始直後に出すのが安全です。
業務改善助成金以外の 選択肢
厚生労働省と中小企業庁は、最低賃金対応の支援策をまとめた特設サイトを開いています。パートを正社員にしたときのキャリアアップ助成金、給与総額を増やした企業の法人税を軽くする賃上げ促進税制、日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金という融資もこの並びです。業務改善助成金が締切や要件で使えない場合も、何かしらは引っかかる可能性があります。
人手不足への対応でまとまった設備投資を考えているなら、中小企業省力化投資補助金という選択肢もあります。上限が大きく、いままさに第8回公募の要領が出たところです。こちらは別の記事に整理してあります。
関連記事: 省力化投資補助金の第8回公募要領が公開。締切は10月中旬予定
9月は 逆算で 動く 月
最後にスケジュールを逆算しておきます。まず自分の県の新しい最低賃金と発効日を労働局の発表で確認する。締切はその前日か11月30日の早いほうです。いまの事業場内最低賃金がいくらか、誰を何円上げると何コースになるか、何に投資したいかを固めて見積もりを取る。受付はもう始まっているので、固まったら早々に労働局へ申請する。交付決定が出たら発注し、発効日の前日までに時給の引き上げを終える。この順番です。
正直、申請書類は簡単ではありませんし、助成金は後払いなので立て替えの資金繰りも要ります。それでも、どうせ避けられない賃上げに最大数百万円の設備投資支援が付く機会は、この秋の短い受付期間しかありません。
業務改善助成金の審査は労働局ですが、設備投資や販路開拓に使える補助金は、国の電子申請システムjGrantsに常時300件前後の公募が載っています。デルカモでは、その公募を毎日同期して、業種とやりたいことから使える制度を上限額・補助率・締切つきで無料で表示しています。賃上げの原資づくりに使える制度がないか、あわせて覗いてみてください。
本記事は2026年9月8日時点の官公庁の公表資料・公募要領・jGrants掲載情報に基づいています。締切・金額・要件は変更されることがあるため、申請時は必ず公式の最新情報をご確認ください。デルカモは申請書類の作成代行は行いません(行政書士法遵守)。
最近の記事
- スマートレジ補助金は9月29日締切。小規模事業者なら4/5補助2026年9月9日
- 最低賃金の発効日は県で違う。47都道府県の一覧と助成金の締切2026年9月8日
- 事業承継・M&A補助金の16次公募、受付は10月2日から11月6日まで2026年9月7日